インタビュー

「情報に惑わされず、自分の気持ちに正直でいることがギターを楽しむコツだと思います。」——ギター講師・ISAO

KGA Studioのコンセプトである「音楽を楽しむ」をとことん追求する、連載インタビュー。音楽を楽しむとは、どんなことだろう?自分にとって音楽とは、どんな存在だろう?
音楽の捉え方は人ぞれぞれあるはず。この連載を通して、いろいろな人の考え方や想いを発信していくことで、音楽やギターの楽しみ方を音楽の魅力を再発見していきましょう。

今回のインタビュイーは、KGA Studioギター講師のISAO講師。
ご自身の音楽やギターのルーツを辿る中で、それぞれの魅力や楽しみ方を教えていただきました!


取材・文/根本 理沙(株式会社Lipple

学生の頃から、なるべく毎日ギターに触るようにしています

——音楽やギターの楽しみ方を教えていただく前に、まず、ISAOさんにとっての音楽やギターのルーツを教えてください。

僕がギターをはじめたのは、中学1年生のころでした。公立の中学って地元のいくつかの小学校の生徒が集まるじゃないですか。
それで、僕が通っていなかった小学校の生徒たちがX JAPANが好きな子が多くて、ドラムやギターができる子がいたんです。
その子たちの姿を見て、影響を受けて、僕もX JAPANを聴くようになり、ギターをやりたい!と思ったのがきっかけでした。

母親が長く使っていなかったクラシックギターが自宅にあったので、最初はクラシックギターで練習していたのですが、そのうち満足できなくなり最終的にエレキギターを買って練習するようになりましたね。そこから今まで25年、欠かさず練習してきました。

——そうなんですね。お母さまもクラシックギターを持っていらしたということですが、音楽自体は昔から身近なものでしたか?

アニメの曲を聞いたりはしていましたが、好きな音楽のジャンルとかは特になかったですね。子どもの頃は空手を習っていたりと、スポーツを一生懸命やっていました。
この音楽、このアーティストが好きだ、と思ったのはX JAPANが最初でした。

——ギター歴25年ということですが、中学生でギターをはじめてから現在までの道のりを教えてください。

ギターをはじめて半年か1年くらいは地元のギター教室に通っていました。教則本を1周した時に、こんなものかなと思って辞めてからは、自分で独学で練習してきました。

その時は毎日、夢中で練習していましたね。X JAPANの曲もそうですし、中学生の多感な時期だったので(笑)、好きになった女子の影響でB’zにハマって、練習したり・・・
当時はバンドブームだったので、中学から高校の間は、バンドの曲を聴いたり、練習したりしていました。

——学生の頃からバンド活動をされていたのですか?

学生の頃は、本格的なバンドというよりは友達で集まってという感じですが、文化祭で披露したりしていました
当時一緒に練習していたドラムの友人の家がすごくて。家の地下にライブハウスがあったんですよ。みんなで夜集まって、ひたすらギターの練習をしたり、レコーディングの真似事とかをしていましたね。

——そこまで熱心にやっていらっしゃると、将来プロになりたいという思いもありましたか?

漠然とプロになりたい、ロックスターになりたいというのはありました。高校2年生って進路について考える時期になるじゃないですか。その時、専門学校へ行きたいと僕は思っていたのですが、親に説得されて大学に進学し、そこからはサークルや知り合いの人と組みながらバンド活動をしてきました。
長くやっていたこともあって、大学でもバンドサークルを掛け持ちしたりしていました。

社会人になってからは友人や知り合いの人とバンドを組んで、オリジナルの曲を作ったりライブをやったりしていました。

——働きながらバンド活動をされていたんですね。

そうですね。なるべく毎日ギターには触るようにしていました。仕事から帰ってきたら少しでもギターを弾くようにしていましたし、休みの日はがっつり練習したり、バンド活動をしていたり。
人と演奏するというのが好きだったので、社会人になっても何かしらのバンド活動は続けていました。

コロナ禍になってから、バンドで集まることを控えるようになってしまったのですが、それがきっかけでこーじゅんさんというギタリストに出会い、エレキギター一筋だったのがアコースティックギターもやりたいと思うようになったんですよ。

こーじゅんさんの躍動感ある演奏に惹かれ、本格的にアコギを弾くようになりました

——そうだったんですか!ぜひその話も詳しく聞かせてください。

そもそもコロナ禍になって活動をどうするか考えていた時に、バンドメンバーの夫婦にお子さんが生まれまして。それならしばらくは集まるのをやめようかという話になったんです。

バンド活動ができず一人で練習していた時は、大学のバンドサークルの後輩が話し相手になってくれていたのですが、彼が「こーじゅんさんって知ってる?すごいよ」と教えてくれたんです。
こーじゅんさんの存在はなんとなく知っていたのですが、彼に言われて改めて意識して動画をみたら、こーじゅんさんの躍動感ある演奏にすごく惹かれたんです。アコースティックギター1本だけで、なんて楽しそうに演奏するんだろうと。
それからアコギをやりたくなって、本格的にアコギを弾くようになりました。ちょうどその時期にこーじゅんさんが教則本を出していたので、レッスン動画と併せて練習していました。

3ヶ月くらいそのスタイルで練習していたのですが、ある日こーじゅんさんがレッスンをやっているのを知り、レッスンを受けるようになりました。
そこからはずっとアコギメインで弾いています。

——曲の好みや演奏スタイルが変わったりはしましたか?

あまりそういうのはないですね。
そもそもエレキギターとアコースティックギターでそれぞれ得意な領域や、できるようになりたいことは違うと僕は思っています。

エレキだと激しい曲、速いテンポの曲をがっつり弾いたりとか、チョーキングを上手く聴かせたいというのが主でした。いつかはうまくできるようになりたい、というのは昔から思っていました。

アコギで身につけたことや学んだことは、いつかエレキに落とし込んでいきたいとも思っています。
僕の考えですが、アコギって難しくて、毎日触っていないとすぐにテクニックが落ちていくんですね。1日でも間が開くと、指の硬さが全然違っているように感じるんです。
だから、アコギのスタイルが定着するまでは、アコギに集中しようと思っています。

音楽は、感動をくれるもの

——ISAOさんにとって、音楽はどのような存在ですか?

感動をくれるもの、だと思います。生きているといろいろなことがあるけれど、何かあった時に側にいてくれるのが音楽だと思います。

例えば、悲しい時は、自分の中の悲しいと思う曲を聴くことで、さらにその感情を深めてくれる、浸らせてれるような力があると思います。
逆に音楽を聴いて気分を変えたい、ということもあると思いますが、僕にとっては、その時の自分の感情をさらに強くしてくれるのも、音楽の魅力だと思います。

——普段、ISAOさんはどのような時に音楽を聴きますか?

通勤時など、モチベーションを上げたい時に聴くことが多いですね。音楽を聴くことでストレス発散にもなっていると思います。
例えば朝の通勤時に、その時ハマっている曲を大きめの音量で聴くと、よし帰ったら練習だ!と思えて、練習時間を確保するために今日も仕事を頑張ろうと思えるんです。

——モチベーションを上げたい時に音楽を聴くことが多いとのことですが、ISAOさん流の音楽の楽しみ方を教えてください。

僕の場合は、ギターを弾くという過程に、音楽を楽しむことがあるようなイメージです。楽しむというより、修行とかアスリートの感覚に近いかもしれませんね。

練習の中で音楽に触れることで、自分の理想にひとつずつ近づいていく感覚が楽しいです。
ギターで弾きたいものが弾けた時、集中して練習してきたものが身についた時は満足感や達成感が生まれます。
もちろん、何も考えずに、ただギターをかき鳴らして、それに合わせて歌ってストレス発散する時もありますけどね。

僕の場合、何気なく聴くよりは、意識して音楽を聴きにいくことが多い気がします。楽曲の分析やテクニックを知るためだったり、練習のモチベーションを上げるためだったり。

聴きにいくからには良いものに触れたい、というのはあります。ふと耳に入った音楽で良いなと思ったら調べてみたり、音楽配信サービスのプレイリストを検索して、気になった曲は後でじっくり聴いたり、曲やフレーズを弾けるようになるまで練習したり。
自分から好きな音楽を探しにいくというのも、音楽の楽しみ方のひとつかもしれませんね。

自分でやりたい表現ができるようになる感覚が楽しい

——ありがとうございます。今度は、ISAOさん流のギターの楽しみ方を教えてください。

先ほどの内容と重なる部分もありますが、自分の目指している理想に近づくための練習をしたり、そのための練習を考えることが僕は楽しいです
自分で表現したいことや、かっこいいと思ったものができるようになりたい気持ちが強いんですね。
挑戦しようと思っていることが、ひとつ一つできるようになっていくことや、いつでもできるようになること、さらに自分で表現できるようになっていくことが楽しいです。

ギターは、年齢を重ねると、速弾きなどの身体能力が求められるスキルは衰えるかもしれませんが、表現力は上がっていくしかないと僕は思っています。
年齢を重ねてもできる楽器だと思いますし、年齢を重ねたからこそできるようになることもあると思うんです。その点は、スポーツとは違うギターという楽器ならではの魅力かもしれませんね。

長年やっているバンドを聴いてもそう感じることがたくさんあるんです。やっぱり時代ごとにバンドの雰囲気といいますか、色が違いますよね。このバンド、今は表現力の豊かさや、バンドとしてのレベルの高さに圧倒されるけど、若い時代の粗々しさも良かったな、と思ったり。

テクニックだけでなく、その時代のアーティストの環境だったり、メンバーの感情だったり、楽曲の裏側にあるものを見つけようとするのも楽しいですね!
そうやって見えてきたものを、自分のギターの演奏に取り入れていく、ということも自分の表現を磨いていくひとつの方法だと思います。

——ISAOさんはエレキギターとアコースティックギターを弾かれると思いますが、それぞれの良さを教えてください。

もちろん好きなスタイルが皆さんあると思うのですが、僕の思うエレキギターの魅力は、バンドの中で演奏するということです
バンドアンサンブルを突き詰めるために、ひたすら自分の演奏を磨いていくギタリストの姿は、昔からの憧れです。

アコースティックギターに関しては、ギター1本でリズムやメロディーなど、いろいろなことができるところに魅力を感じています
もちろん、バンドの中でアコースティックギターの魅力を発揮することもあると思いますが、僕の感じるアコギの魅力は、こーじゅんさんの影響も大きいですね。

——ご自身の得意な演奏スタイルはありますか?

得意かどうかわからないけれど、ソロギターのピック弾きなどを中心に演奏しています。一人で演奏しても、複数の楽器で演奏しているように聴こえるスタイルが好きですね。

今さらにスキルアップを目指しているのは、セッションやアドリブです。アコギ同士のセッションをすると、他の音同士が混ざり合うことでひとつの音楽になっている、ということを鮮明に感じやすいんです。これはバンドでやっていると気づきにくいポイントでした。
先ほども話しましたが、アコギで身につけたセッションやアドリブのスキルを、エレキギターに取り入れてやってみたいなと思っています。

——アコースティックギターのセッションのおもしろさはどのようなところにありますか?

そうですね。何度もセッションを重ねていくと、音で語り合っているのを感じられる瞬間があります。演奏やお互いの雰囲気で、相手の気持ちもわかるようになりますし、自分の気持ちもわかるようになるんですよ。

今こうくるかな、自分がこうやったらこう返してくれるかな、など、音で会話するような感覚は、セッションだからこそ味わえるおもしろさですね。

おもしろいことや楽しいことを探してみるのもいいですよね

——KGA Studioにはギター初心者の会員さまもたくさんいらっしゃいます。初心者が楽しみながらギターを続けられるポイントを教えてください。

いろいろなことをやってみて、ギターに対して、おもしろいな、好きだな、という気持ちを持ち続けることが、長くギターを楽しむコツではないでしょうか。

挫折する理由はいろいろあると思いますが、やっぱり楽しい、という気持ちがなくなると、続けられないと思うんですよね
上達するための練習も大切ですが、自分がこれを弾きたい、試してみたい、と思っていることに挑戦することも大切だと思います。

目指すゴールの道のりが遠いなら、時々寄り道して、おもしろいことや楽しいことを探してみるのもいいですよね。先ほど話したように、ギターは年齢を重ねても楽しめる楽器だと思っているので、焦らず長い付き合いをしていきましょう。

時々、人と演奏してみる、というのも刺激になるのでおすすめです。
それこそ中学生になってギターをはじめたばかりの頃は、ライバル心むき出しでやっていました。
地元のヤンキーが集まってするような話を、ギター仲間としていました。どこ中のあいつがすげー上手いらしい、みたいな(笑)
友だちが上手いと悔しくて、家に引きこもって練習したり、誰もみていないところでたくさん練習したり、そういう気持ちも大切ですよね。

自分ひとりで突き詰めていくのもいいですが、お互いに鼓舞し合える仲間がいると、モチベーションや上達スピードが違うと思います。
単純に仲間と交流することで、ギターや音楽の楽しみ方もどんどん広がっていきますしね。

僕自身も、KGA Studioの講師研修を経て、自分のことを客観的にみられるようになりました。
他の講師の方々と一緒に研修を受けることで、皆さんのこれまで辿ってきた道のりや培ってきたスキルが違っていて、それぞれの魅力に触れることで、自分の中で新しい発見がたくさんありました

今後、会員さまに良いレッスンを提供できるよう、もっといろいろなことに触れたい、できるようになりたいという気持ちが高まっています。

自分の気持ちを大切に、自分の中の好きを広げていきましょう!

——最後に、これからギターを始めようと思っている人へメッセージをお願いします。

せっかくギターをはじめるのであれば、ギターを「好き」になってほしいです。
何かをはじめる時、人から聞いた話やネットに書かれていることなど、たくさんの情報に振り回されてしまうかもしれません。けれど、自分が本当に好きだな、と思える音楽を聴いて、自分が本当に好きだなと思える楽器を選んでと、自分の感情に素直でいることが、楽しく続けるポイントのひとつだと思います。

これがいい、あれもいい、そっちもいい、といろいろな話が出てきた時、自分はこれが良いかもと思ったら、その気持ちを大切にしてほしいです。
自分の本当の気持ちを裏切ってまで、周りのいうことを聞かなきゃいけない世界ではないので、一つひとつ確かめながら、自分の中の「好き」を広げていきましょう!

——本日はありがとうございました!

ありがとうございました。ギターを極めていく、みたいな話が多くなってしまった気がしますが・・・
音楽やギターを楽しむきっかけに、僕の話がお役に立ったら嬉しいです。

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